京都には、伝統的な漬物、通称「京漬物」があります。
この記事では、京都の歴史深い漬物文化の中でも特に有名な「しば漬け、千枚漬け、すぐき」について詳しくお伝えします。
京都でしか買えないお漬物は、京都駅や百貨店でも見つけることができますが、老舗漬物店も紹介します。
京漬物の魅力とは?
京都の食文化を語る上で、美食と同じくらい欠かせないのが京漬物です。
豊かな自然環境に恵まれた京都では、多様な伝統野菜が栽培されています。
京都の多くの寺院では菜食主義が根強いため、これらの野菜は長年にわたり大切に育てられてきました。
その野菜を長持ちさせる方法として、塩漬けやぬか漬けなどの漬物技術が発展しました。
京都で栽培される旬の野菜の風味を最大限に活かし、独自の保存技術で作られる漬物が「京漬物」として知られています。
この京漬物文化は京都を起源とし、やがて日本全国へ広まっていきました。
京都でしか買えないお漬物の特色
京漬物の中でも、赤紫蘇と茄子を使った「しば漬け」、聖護院カブラを使う「千枚漬け」、すぐき菜を使用した「すぐき」が、「京都三大漬物」として特に有名です。
これらは京都を象徴する特産品として広く愛されています。
しば漬けの特徴
京都のしば漬けは、自然な発酵プロセスによって生まれる独特の酸味と鮮やかな赤色が魅力的です。
大原地区で栽培された赤紫蘇の葉を使って、茄子や茗荷、胡瓜などの夏野菜を漬け込み、乳酸発酵させて作られます。
「京都大原三千院」で知られるこの地域は、赤紫蘇の主要な産地でもあります。
「京しば漬」や「生しば漬」とも言われています。
この漬物は特に、夏の7月から8月にかけてが旬です。
しば漬けの由来は平安時代末期に遡り、源平合戦後に大原の寂光院で過ごしていた平清盛の娘、建礼門院徳子が地元の村人によって贈られたこの漬物を愛し、「紫葉漬け(しばづけ)」と名付けたことに由来します。
千枚漬けの特長
京都を代表する漬物である千枚漬けは、「聖護院かぶら」という京野菜を薄切りにし、壬生菜、昆布と共に塩と甘酢で軽く漬けることで作られます。
かぶら、壬生菜、昆布の繊細な味わいが絶妙に調和しています。
昆布と甘酢の優しい甘さと、かぶらのパリッとした食感が、ご飯やお茶、さらにはお酒とも相性が良いです。
子供たちにも人気の味です。
冬に最も美味しい千枚漬けは、10月から店頭に並び始め、「京都の冬の到来を告げる漬物」として親しまれています。
千枚漬けの誕生は江戸時代末期に遡り、孝明天皇の宮廷で料理人を務めていた大黒屋(大藤)藤三郎によるものです。
彼が漬けた聖護院かぶらは、一樽で1000枚になるほど薄切りで、「千枚漬」と名付けられました。
発酵を行わずに仕上げるこの漬物は、当時の新鮮で繊細な風味が評判になりました。
すぐきの特徴
すぐきは、京都独自の「酸茎菜(すぐきな)」を使用した伝統ある漬物です。
この漬物の特徴は、パリパリとした食感と独自の酸味です。
すぐき菜は、カブに近いアブラナ科の植物で、葉は厚く深い緑色をしており、根は短く円錐形で大根を思わせる形をしています。
このすぐきは、天秤漬けと呼ばれる伝統的な方法で塩漬けされ、その後室内で乳酸発酵させることで独特の風味が生まれます。
この漬物は、その特有の酸味が魅力で、ご飯やおにぎりとの相性も抜群です。
通常、冬から夏にかけて市場に出回ります。
すぐき菜の栽培と漬物の製造は、約400年前に上賀茂神社の社家によって始められたとされ、その起源には複数の物語があります。
一つには賀茂川の河原で見つかった珍しい植物を栽培したこと、もう一つは御所から贈られた植物を植えたことが始まりとされています。
すぐきは上賀茂の特産品として、賀茂社家から御所や公家などに高級贈答品として贈られ、その製法は秘伝とされていました。
1804年(文化元年)に発行された「就御書口上書」という御触書により、すぐき菜は京都・上賀茂に固有の品種として守られることになりました。
京都の老舗漬物店
京都には、歴史ある多くの漬物店があり、それぞれが高品質な商品を提供しています。
京都の著名な三大漬物に特化した老舗店をご紹介しますと、次の3軒が特に有名です。
土井志ば漬本舗
1901年(明治34年)、京都・大原で開業したこの店は、しば漬けの重要な材料である「ちりめん赤紫蘇」を使った製法で知られています。
「志ば漬」は、厳選された夏の野菜、塩、そして「ちりめん赤紫蘇」だけを使い、100年以上続く伝統の乳酸菌発酵技術で味わい深く仕上げられています。
千枚漬本家 大藤
「大藤」は、京都の千枚漬けの伝統を築いた老舗として知られており、その歴史は1865年(慶応元年)にさかのぼります。
創業者の大黒屋藤三郎は、元京都御所の料理人で、千枚漬けの発明者として名を馳せています。
彼が作った白く美しい千枚漬けは、宮中で高く評価されました。
その後、彼は自らの名前を変え、「大藤」という屋号で漬物の販売をスタートしました。
この店の千枚漬けは、その繊細で深みのある味わいが特徴で、長年にわたり多くの人々に愛されています。
御すぐき處 京都なり田
「京都なり田」という名のこの店は、公式には1804年(文化元年)に開業したとされますが、実際にはその300年以上も前から、京都の上賀茂地域で伝統的なすぐきの製造に携わってきました。
1804年にはすぐき菜が上賀茂地区の特別な品種として認められ、それ以来、なり田は伝統的な製法を守り続けています。
なり田で作られるすぐき漬けは、塩だけの純粋な無添加の漬物です。
この漬物の風味は、天然の植物性乳酸菌の発酵によって引き出される濃厚な酸味が特徴的です。
手作りの伝統的な方法で塩だけを使って漬けられたすぐきは、自然発酵により生まれる深みのある酸味と旨味が調和しています。
「ちりめんすぐき」では、すぐきの程よい酸味を活かして、細かく刻んだ茎と葉に醤油を加え、味わい深いちりめん山椒を合わせています。
酸味が苦手な人には、塩漬けにしたすぐきと大根を組み合わせた「すぐき・大根合せ漬」がおすすめです。
まとめ
京都は、独自の製法と味わいで知られる漬物の中心地として名高いです。
特に有名なのは、色鮮やかなしば漬け、カリカリの食感が心地よい千枚漬け、そして独特の発酵された風味のすぐきです。
これらの漬物は、京都の自然と長い歴史の中で育まれ、来訪者の心を捉え続けています。
京都にはこれらの漬物を取り扱う名高い店が数多く存在し、各店は伝統の味を守りながらも新しい味わいの開発に努めています。
京都を訪れる際や、特別なお土産をお探しの時には、これら漬物専門店への訪問をおすすめします。